目次
はじめに
先日制作現場で、歌い手さんが「20年前に歌った曲の歌を録り直したい。」との事だったのですが、いざ歌録りとなった時に思ったように高い声が出ないみたいで、「キーを半音下げたい。」という事になりました。
幸いマルチトラックは残っており、Protools に流し込んでマルチのオーディオトラックをエラスティックでトランスポーズしてみたのですが、うまくいかずに困っていたところ、Logic にもトランスポーズの機能がある事を思い出し、やってみたところかなり良かったので、方法をメモしておこうと思います。
上記で「かなり良い」と書いたのは、そもそも無理な処理をしているので、どうしても違和感は出てしまう処理という事を踏まえた上でオケに入ってしまったらそこまで違和感が目立たなくなると言った意味合いです。
今の時代の技術力ではMIDI音源を気軽にトランスポーズするような事はオーディオには望めませんので、その辺りを踏まえて読んで頂けたら幸いです。
トランスポーズの方法
それでは具体的な方法です。まず題材となる簡単なサンプル音源を下記に載せます。
MIDI音源で打ち込んだギターのアルペジオなのですが、ギターはオーディオのトランスポーズでわりと違和感が出やすい音源なので、こちらにしてみました。
トランスポーズのやり方はとても簡単です。

上記画像の様に、トランスポーズしたいクリップを選択後、
1.左上のインスペクタボタンをクリックしてインスペクタを表示させます。
2.インスペクタ内のトランスポーズに変えたい数値を入れます。
数字は半音単位です。ですので半音上げたい場合は「1」半音下げたい場合は「-1」と入れます。
3.クリップ名の横に(-1)の様にトランスポーズに入力した数値と同じ数値が出ていたら、トランスポーズが適応されているという事になります。
これだけです。トランスポーズ後の音を下記に載せます。
如何でしょうか??
違和感が無いと言ってしまうと嘘になりますし、ソロでは耐えられないかと思いますが、オケに入ってしまえばあまり違和感なく聴けるレベルではないでしょうか??
本来はトランポーズせずに録りなおすの一番良いのですが、ギターリストを招く予算もないし、録りなおしている時間もないという緊急事態では頼れる機能かと思います。
トランスポーズしたオーディオをバウンスではない方法でトラック書き出しする方法
次にトランスポーズをした音源を書き出す方法です。なぜバウンスを使わないかと言いますと、トランスポーズしたオーディオトラックがモノトラックの場合、バウンスしてしまうとステレオトラックになってしまうからです。
ステレオトラックになってしまうと書きましたが、実は Logic ではモノトラックとしてバウンスする事もできます。できるのですが、ちょっと工程が複雑で間違いが起こりやすいので避けた方が良いと思います。
シンセパッドなどのステレオトラックをトランスポーズした場合は、バウンスでも良いかと思いますが、トラックのフェーダーを通ったり、マスタートラックを通ったりする間に何かプラグインエフェクトを挿していたりすると本来の音とは変わってしまいますので、極力トラックの書き出しにバウンスは使わない事をお勧めします。
書き出しの方法もとても簡単です。

最後に
如何でしたでしょうか??
実はLogicにはオーディオエディタの「機能」の中に「Time and Pitch Machine」というトランスポーズ機能があります。こちらは Logic がオーディオを扱える様になった頃からある昔ながらの機能で、Flex Pitch という機能が Logic に搭載されるまでは Logic のトランスポーズはこれ一択でした。
上記画像の様なもので、赤囲のところにトランポーズしたい数値を入れて右下の「処理をしてペースト」をクリックする事でトランスポーズができます。こちらはセント単位ですので、100で1半音になりますので、半音上げは「100」半音下げは「-100」となります。
この機能を使ってトランスポーズした音源を下に載せます。
どうでしょうか??特に最後の方の音を伸ばしている部分が揺れてしまって、かなりの違和感があるかと思います。
これですとちょっと素材としては使えないかと思います。
Logic がなぜこの機能を今でも残しているかは分かりませんが、近い将来廃止される機能なのではないかと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございます。皆様の制作のご参考になれば幸いです。